「僕のところにその通知がなければ助からなかったと思います。」
そう語るのは
熊本県 阿蘇で赤毛和牛を
繁殖・肥育されている井さん。
あか牛の出産にIoT(アイ・オー・ティー)を
導入した事により出産効率が劇的に
よくなったと言います。
このIoTという言葉
近ごろ、よく耳にしませんか?
じつは私たちの身の回りにも
ネットワークはすでに浸透しています。
生活の中でいうと携帯のアプリから操作ができるテレビや
エアコンなどの家電製品、「スマート家電」がそうですよね。
暑い日でも外出先から冷房の温度を調整しておけば、
いつでも涼しい部屋を完備できたり、玄関先のセンサーが訪問者を
随時通知で教えてくれたりします。
さらには自動運転「スマートカー」人がアクセルやブレーキ
ハンドルを握らなくても目的地まで安全に走行してくれる
未来はすぐ目の前まできているようです。
このようなあらゆるモノがインターネットと繋がり情報をやり取りすることで
価値の高いサービスが広がってきていますが
ここ熊本県阿蘇であか牛の出産を助けてくれています。
破水の時はメールで教えてくれる
「いまあそこに血管が見えるくらいに乳がパンパンに張っている
牛がいますよね?もうあと数時間で生まれそうです。」
井さんが指差す先には、たしかに牛舎で1頭だけソワソワしている牛がいます。
ほかの牛が餌を食べているのには見向きもせず落ち着かない様子。
よく見ると出産をまじかに控えた赤毛和牛のお尻から何やら紐のようなものが垂れ下がっています。
「あのお尻から出ているものは何ですか?」
牧場主の井さんのお話では
「あの紐の先にはセンサーがついていて携帯と連動させているんですよ。
(センサーは棒のように長いので妊娠後期になると子宮口に差し込むそうです)
昨日生まれた仔牛は逆子だったのでそれがなければ死んでいたかもしれません。
母牛が破水すると一緒にセンサーがポロっと出てきて携帯のメールに通知してくれるんです。
その時、僕はずっと外の作業をしていて気づかなかったから急いで駆けつけ、
生まれてくる仔牛を引っ張ってあげることができた。無事に生まれてよかったです。」
(まだヘソ緒もついたまま生まてすぐの仔牛)
その後すぐに別の母牛も出産して大変だったそうで、
本当このセンサーのおかげで楽になったと笑顔で答えてくれました。
導入する前は母牛が出産近くになると
牛舎まで様子を見に何度も足を運び気にかけていたそうです。
夜中まで付き添う事も当たり前で生まれない日が3日も続くと
フラフラで気持ちが重くなっていたとおっしゃいます。
他にも放牧されている牛を含めて100頭以上いるため
ずっと付き添っているわけにはいきませんが最善を尽くしても目を離した
隙に逆子のような危険な状態を迎えていたり、すでに助からない状況も
何度も経験してきたそうです。
このIoTの導入により、ほかの作業も効率が上がり出産に伴う
リスクも減らすことができる畜産業には画期的な試みだと言えます。
ひたすらに便利になるためのテクノロジーだと思えるIoT化も
本当に必要とされている場所で役立っているんだなと驚きました。
まだまだ導入しているところは少なく実験的な
部分もあるそうですが1頭でも多くの仔牛が無事に生まれ、
人手不足に悩む生産者さん負担を減らすためにどこまでできるのかな?
まだまだ進化していくところに注目です。
今回お話をお伺いしたのは
熊本県阿蘇の産山村で赤毛和牛を
放牧飼育されてる井俊介さん
良質なあか牛を育てるために
愛情と熱意を持って尽力されています。