寒くなると必ず食べたくなる料理のひとつに
「煮込み料理」があります。

煮込み料理と一言で言っても多種多様なやり方
や捉え方があるため、どの方法で作られた
煮込み料理が美味しいのか判断が難しいと
思います。
当店でも極たまにですが
煮込み料理を作ることがあります。
その中でも一際人気が高い煮込み料理が
「赤ワイン煮こみ」です。
実は赤ワイン煮込みといっても
お店によって作り方やコダワリが
全く違います。
あるお店の煮込み料理は煮込んだその日に
メニューに載せて提供していますし。
またある有名店では、ジックリ1週間ほど
時間をかけて煮込んだ料理もあります。
そして赤ワインを使う量や種類も
様々です。
一般的に言われていることは
「煮込み料理は赤ワインに
最低でも1晩はつけておきなさい」
「その煮汁を使って赤ワイン煮を作るのが
本家の赤ワイン煮込みだ!」
と主張するお店もあります。
当店で提供している赤ワイン煮込みは
どうなのか?
といいますと…
煮込み料理の方法として2通りの方法が
あります。
煮込みを作るときは必ず。
仕上がりの状態や素材の旨さを引き出すために
「どのような方法で煮込んだほうがいいのか?」
を検討してから作るようにしています。
もくじ
煮込みのコツは汁気にある
例えば。
このあとご紹介する
「赤身肉100%の赤ワイン煮込み」を作る場合は、
和牛赤身肉自体に脂分が殆どと言っていいほど
ないので、少量の赤ワインとフォンドボーで
煮込みをつくるようなことはしません。
むしろ、たっぷりの赤ワインと
旨味を蓄えている野菜類
濃いめのフォンドボーを加えて
汁気を多めにして煮込みます。
“ビーフシチュー”を思い浮かべていただくと
想像しやすいでしょう。
この方法は、僕が
パリのビストロを友人がシェフをしていたとき
に教わった方法です。
だから一応、
フランス人直伝の方法なのかもしれませんね。
この煮込みの最大の特徴は、
赤身肉を2日かけて赤ワインに漬けておくこと
それと粉をつけて、こんがりと焼き色をつけてから
たっぷりの煮汁で煮ることです。
この方法を専門用語(フランス語)
でラグー(Ragoût)といいます。
イタリア料理でパスタに良く合わせる
“ラグーソース”と同じように一度煮込み
料理を作りそのあとにソースとして
別に仕上げていきます。
この料理を派生させてオリジナルメニューを
作ると料理を作る楽しみや
食べる楽しみが増えそうですね。
それでは当店の作り方をざっと説明しますね。
完成までの所要日数は5日間

なぜ、ここまでの時間をかけて
作っているのか?と説明します。
赤身肉は肉質の密度が高く
他のお肉よりも弾力もしっかりしています。
従来の方法で煮込んでも
肉が柔らかくなりづらいです。
そこで、赤ワインに漬け込む時間を倍にして
煮込みが終わったら煮汁の中に漬け込んで
予熱で柔らかくするなど、客席では知ることのない
細かいテクニックを駆使して仕上げています。
煮込んだ煮汁を煮詰めるだけでも
十分美味しいとは思います。
ですが、当店では別に再度。
新しい赤ワインを煮詰めて旨味をプラスしたソース
を作り、その中でジックリ煮含めてから
仕上げています。
気が遠くなりそうなくらい
“手間ヒマ”をかけていますが
それに見合った美味しさは保証します。
この煮込み料理を一度食べたら、
他のお店の煮込み料理では物足りないくらい
「重厚な赤ワイン煮」です。
作り方
1、肉を準備する

煮込む時間を考慮して、できるだけ
塊の赤身肉を用意したほうがいいでしょう。
もし小さい肉だけで煮込みを作ろうとしても、
長時間煮込むことに対して肉が耐えられません。
肉の繊維が熱によってボソボソになって
ソースに溶け込んでしまいます。
逆に煮込み時間を短縮してしまうと
十分な赤身肉に旨味がのっていない料理
となってしまいます。
なので、できるだけ塊の状態で
煮込んだほうがいいといえるでしょう。
2、野菜類を準備する
使う野菜は玉ねぎ、人参などの香味野菜です。
これらの野菜もできるだけ大きくカットして
煮込んでいる間に溶けてしまわないように
しましょう。
目安として、玉ねぎは4カット、
人参は8カットくらいが良いと思います。
3、たっぷりの赤ワインに漬け込む

僕がフランスで教わったワインは
アルザスのピノ・ノアールでした。
しかし、日本では手に入りづらいことと
それとかなりの高額になってしまうので、
チリ産のカベルネ・ソーヴィニヨンで代用しました。
チリ産のカベルネ・ソーヴィニヨンは
タンニンが多いです。
個人的には煮込み料理に向いていると思います。
赤ワインに漬けるときの注意点があるとすれば、
使用する赤ワインはケチらないこと!
十分な量の赤ワインに漬け込んできこそ
美味しい赤ワイン煮ができます。
これを2日間かけて漬け込みます。
途中で上下を入れ替えるなど工夫をしています。
4、肉と漬汁そして野菜に分けます。
ここでよく水分を切っておかないと、
この後の工程である肉を焼く作業ができないので
十分水気を切っておいてください。
5、肉に味をして粉をふりかけて焼く
よく水気を切った和牛赤身肉に軽く
塩コショウをして粉をまぶしてから
香ばしく焼きます。
必要以上に焦がさない方がよいでしょうね。
それと同時に別の鍋で野菜類を炒めておきます。
最後にトマトペーストを加えます。
6、赤ワインを入れて煮詰める

新たに赤ワインを加えてアルコール分を飛ばしましょう。
十分アルコール分が飛んだらつけ汁を加えて煮詰め
他の材料をすべて入れて最後にフォンドボーを加えて
一度沸騰させましょう。
よく灰汁をすくってから蓋をします。
7、180℃のオーブンで煮込む
必ず沸騰した状態を保つような温度で
コトコトと煮込んでください。

このときは和牛赤身肉が柔らかくなるまで
8時間煮込みました。
もう少し小さい赤身肉ならばもう少し
込む時間が短いかもしれません。

8、肉を優しく取り出し煮汁と浸ける

熱い状態に肉を取り出すと、折角柔らかく煮込んだ
赤身肉が固く固まってしまいます。

それを防ぐために、
煮汁のなかでゆっくりと温度を下げていきます。
このようにすることで、温度が下がると
一緒に柔らかくした肉の繊維の中まで
煮汁が浸透していきます。

この状態で最低1日間休ませます。
9、肉と煮汁に分けておく

この状態で煮込み料理として提供しているお店
もありますが、当店ではそのようなことはせず
さらに旨味をプラスしていきます。
そのために、煮上がった和牛赤身肉と
煮汁を分ける必要があります。
煮汁は一度鍋で温めて脂があれば
取り除いておきます。

10、ソースを作ります。

今回は赤ワインと赤身肉の相性を
楽しんで欲しいので、赤ワインを多めのソース
にします。
ソースの作り方は以下になります。
鍋に砂糖を溶かし軽く焦がします。
焦げすぎる前に赤ワインビネガーを加えて
煮詰めてから、前日に脂などを取り除いた煮汁、
足らなければフォンドボーを加えます。
そのまま煮詰めていき、適当な濃度になった
ところで細かめの裏ごしでソースを濾します。

11、仕上げ

いよいよ仕上げです。
和牛赤身肉とソースを鍋に一緒にいれて蓋をして
ゆっくりと煮上げます。
肉の柔らかさが戻ったら、肉だけ取り出し
残ったソースを煮詰めます。
このときバターを加えて煮詰めましょう。
お皿に和牛赤身肉の赤ワイン煮込みをおいて、
上からソースをたっぷり掛けて、
上から黒胡椒を振りできあがりです。

どっしりとした赤ワインに絶妙に合う煮込み料理
この赤ワイン煮の写真をご覧いただくだけで
想像ができると思いますが、かなり濃厚です。
旨味が多く含まれているソースに合わせるワインは
ピノ・ノアールのようなワインは余り合わないでしょう。

オススメはカベルネ・ソーヴィニヨンや
シラーやメルローなどの、重厚感のある
赤ワインと絶妙にあうと思います。
寒い時期に食べるからこそ
赤ワインと煮込みの組み合わせを
いつも以上に美味しく感じます。
この方法を他の外国産の赤身肉に作っても
いいかもしれませんが、何か物足りなさを
感じます。
口に入れたとき、ソースの味しかしないのです。
煮込み料理は肉を美味しく食べる料理です。
原材料の問題が、こういうところで出てくるのかもしれません。
どこで大切に育てられた牛肉を使用するのか、
それを活かす調理方法はどれなのか?は
この料理を作ってみて再確認しました。
この記事をご覧になり『是非食べたい!』と思う方は
在庫があるうちにご来店くださいね!