熊本県【阿蘇の赤牛】が優れた赤身肉である秘密(後編)

和牛赤身肉専門の肉エビスです。

 

赤牛のことは前編もあるので、まだお読み出ない方はこちらも合わせてご覧になって下さい。

 

熊本県の阿蘇は世界最大級のカルデラがある広大な景観が特徴的です。

 

阿蘇の中でも、私たちが本当に「旨い!」と思える赤牛を育てている”産山村”の農家さんにお話を伺ってきました。

 

「なぜ?とりわけ産山村の赤牛が別格なのか?」について、この記事では現地見学をした経験をもとにご紹介しています。

 

そもそも熊本県の阿蘇郡は
3町3村」に別れています。

・南小国町
・小国町
・産山村
・高森町
・西原村
・南阿蘇村

 

なかでも、上記3番目にある阿蘇 産山村の農家さんでは、赤牛の飼育方法にこだわりがありました。

阿蘇の赤牛が格別なわけ

赤牛を放牧させるためには、1頭ごとに決められた【敷地面積×牛の頭数】が必要です。

 

阿蘇に広がる牧草地を、赤牛たちが自由に動き回っても、エサの取り合いにならないのは、しっかりと管理している農家さんたちのおかげです。

 

野焼きという作業で毎年山を燃やして新鮮で良質な牧草地を維持しています。

 

そんな恵まれた環境に産まれた、子牛と母牛は引き離されることなく、一緒に放牧されます。

 

放牧期間は気候のいい春から寒くなる秋頃まで。

 

山風が気持ちよく吹いている牧草地を7〜9頭ほどのグループを作り、大好物の草花がある場所を探して、のんびり移動しながら毎日過ごしています。

 

農家さんに聞いた話では、

 

産山村の赤牛たちには好き嫌いがあるらしく、牛たちが移動したスペースには、なぜか“ワラビ”だけが点々と残されているそうです。

 

とはいえ、乾燥させた草ではなく、新鮮でみずみずし草を食べている赤牛たちは健康状態が良く、滅多に病気にはかからないと言います。

 

他のエリアの和牛と比べると、とても恵まれた環境で飼育されています。

 

だからこそ、極上の風味が肉質に現れているのでしょうか。

赤牛を育てる神水のパワー

環境のいい場所には、必ずと言っていいほど綺麗な水源があります。

 

産山村では、池山水源という名水が日本名水百選に登録されています。

 

透明度が高く、コンコンと止まることなく湧き上がる水は、地域で暮らす人々の生活用水として欠かせません。

 

泉がある場所を訪れてみると、冷んやり涼しい場所で、水流の音が厳かに聞こえてきます。

 

 

まるで、別の空間にいるような気持ちになる熊本県のヒーリングスポットです。

 

偶然でしたが、この日は台風が接近したあとで、水源には産山村の人々が集まって泉の清掃をされていました。

同時に、最後は神主さんによるお清めの儀式もあり、この神水があるおかげで赤牛たちは健康に育ち、素晴らしい肉質が生まれているんだな、と感じました。

鯉農法で作るお米と赤牛の蜜な関係

産山村の農家さんではお米も作っています。

 

お世話になっている間、毎日いただいた白米の美味しさには感動でした。

 

 

炊きたての米は甘くて香りが素晴らしく、それだけでお代わりできるほどです。

 

『どうしてこんなに美味しいのか?』

不思議でしたが完全に無農薬で米を作っているとのこと。

 

 

今の時代に無農薬なんて珍しくない、と思われるかもしれませんが。

 

日本の多くの米農家では、稲を食い尽くす害虫を排除するためや雑草が生えないように農薬を当たり前に散布しています。

 

 

無農薬で作るのは大変な労力がかかるので仕方がないのかもしれません。

 

 

ですが、産山村の農家さんでは農薬は一切使いません。

どうやったら、

牛の面倒を見ながら米も作れるのか?と感じましたが田んぼには、なんと驚きくべき、強力な助っ人がいるのです。

 

 

鯉(こい)農法と呼ばれている方法で、田んぼの中に鯉を放って害虫駆除を行っています。

 

 

この方法は、鴨(かも)を田んぼで飼っているのと似ています。

 

 

産山村では、この希少な米で作った日本酒や焼酎がありますが

 

ラベルの裏側には
『生産者=鯉』と表記されていて、農家さんの遊び心を感じることができます。

 

 

お酒の味は、米の香りや甘みがすっきと味わえて喉越しが良く、スイスイと飲めてしまう美味しさです。

少し話が逸れたように思うかもしれませんが、じつは、米を作っている田んぼの堆肥は赤牛から、健康的な赤牛の栄養たっぷりな堆肥が、田んぼの米を豊かに実らせてくれます。

 

そして、米を収穫したあとに残る稲わらは、赤牛たちに還元する飼料となります。

 

「赤牛」→「田んぼ」→「稲わら」

 

 

まさにこのサイクルは、循環型農業としてお互いに支え合いながらすべてが回っているのです。

赤牛が大好物 牧草と濃厚飼料の違い

一般的に牛に与えている飼料には大きく2種類あります。

 

それは、『粗飼料』『濃厚飼料』です。

 

粗飼料とは・・・生の牧草、
サイレージ(牧草を発酵させたもの)乾草、稲わらなどのことです。

 

濃厚飼料とは・・・米や大豆、トウモロコシ
大麦、油粕などの穀物系です。中には魚粉や鶏糞を混ぜるところもあります。

 

濃厚飼料はカロリーが高くタンパク質が豊富なので、牛にとっては
不健康になやすくリスクがあります。

 

A5になるような黒毛和牛は、濃厚飼料を多く与えることで脂身を入れて霜降り肉を作っています。

 

赤牛は、与えすぎると脂っこくなる品種であるために、濃厚飼料は極力少なめです。

 

阿蘇産山村では、放牧させることで天然の牧草や稲わらなどを取り入れ粗飼料を主体にしています。

 

ただ、このような育て方をしていると、どうしてもミネラル分が不足してしまうそうです。

 

そこで、赤牛農家さんでは牛舎に牛専用の塩があるそうです。

塊のままゴロンと転がしてあるのを、赤牛がペロペロと舐めています。

 

特に、この赤牛はお腹に赤ちゃんがいるので、一生懸命に塩を舐めていました。

 

仔牛の分も栄養を取ろうとミネラルを補給していたのですね。

阿蘇の赤牛に寄り添う
マニマルウェルフェア

最近耳にする機会が多くなりました。

 

『アニマルウェルフェア』という言葉、あなたは聞いたことはありますか?

 

この考えはイギリスが由来ですが、家畜に対する考え方の指標です。

 

家畜を感受性を持つ生き物として扱う。

 

そして、生まれてから命を全うするまでの間、健康的な飼育方法で、できる限りストレスを、少なくしてあげることを推奨しています。

私たちは産山村の赤牛農家さんで、この想いが汲み取ることができました。

 

管理の行き届いた牧草地では、赤牛らしい十分な広さと自由があります。

牛舎においても1頭あたりの広さが、とてもゆったり確保されていました。

この考えが正しいか間違いか、ではなく。

 

赤牛と共存していくためには、できる限りストレスを減らして健康的に育てる必要があるのでは、と私は感じました。

阿蘇産山村の赤牛が最高

前編でもお伝えしていますが、産山村の農家さんが育てている赤牛は旨味が濃くて赤身が主体の肉質です。

 

他のエリアで育てている赤牛と比べても、肉に脂身はほとんど入っていません。

 

まさに、赤牛らしい味わいを堪能することができます。

 

キレイな真っ赤な発色をしている肉は、粗飼料をたくさん食べてきた証拠です。

 

本当に素晴らしい赤身肉と言えます。

 

あまりにも鉄分が濃い肉になると、ピーピーと金属探知機に通すだけでも音が鳴るそうです。

 

赤牛のステーキとして美味しく食べれる部位を大きく2つに分けると、

 

・モモ系=ンプ、シンタマ、ウチモモ
しっとりと赤身が強くて、濃厚な旨味がある

 

・ロース系=サーロイン、リブロース、
赤身と脂身が絶妙にうまい甘くてさっぱりしている。

阿蘇 産山村の赤牛になると脂身の部分も抵抗なく、食べれるという人が多いです。

 

胸がムカムカしたり気持ち悪くなることもなく、最後まで美味しく食べれることができます。

 

モモ系以外の赤身肉の部位では、『フィレ』も断然オススメです。

 

赤牛は、和牛の繊細さと高貴さを保ちつつお客様の期待を裏切らない極上の肉だと思います。

まとめ

前編、後編に分けて赤牛農家の話をしました。

 

広大な阿蘇の一分にある産山村は、赤牛農家の方々の牛を育てる情熱を感じました。

 

阿蘇は他のエリアでも赤牛飼育が盛んなエリアです。

 

放牧を中心にしてますが、近年はすべて放牧にしないで育てる赤牛もいます。

 

ただ、黒毛和牛と比べ、赤牛は親しみやすい肉の旨さがあり赤身が美味しい肉です。

 

放牧だからいい、とは決めつけないで赤牛とはこういう牛なんだ程度に留めておき、日常でも赤牛の肉を食べれるようにしていただけると、私たちも嬉しいです。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

前編を読み返したい方はコチラです。

 

赤牛の肉のことや調理方法を知りたい方はコチラからどうぞ。